Page 2 - 西の湖10周年 HTML5

ヨシは4月に芽をだし、5月には葉っぱが両手を挙げたように背伸びをしているような、生き生きとした
美しい緑の光景と、鳥のヨシキリがやかましい鳴き声で、刈り残ったヨシの先に止まって鳴いているのを
見ることができます。8月のお盆過ぎるころには黄色い穂がでて成長はほとんど止まりますが、9月頃葛色
の穂に変わります。11月末頃になると緑の葉も枯れてきて、樺色に変わっていきます。12月の末には北
風に吹かれて、葉をもぎ取られてなお風に揺られながらも、凛として立っている冬のヨシ風景です。やが
て、ヨシ刈りが始まります。3月にはヨシ刈りが終わり、末にはヨシ地焼きが始まり、刈り取ったヨシが焼か
れて広々とした焼け野原になります。黒色になったそこから新芽が出てきて一雨ごとにヨシが芽吹き緑に
変わっていきます。

西の湖は、琵琶湖の内湖として一番大きな内湖になりましたが、以前は大中之湖・小中之湖、西の湖
（常楽寺湖・五十町湖）などの湖があり、その中を島が連なって、内湖を形成していました。しかし、太平
洋戦争の食糧不足で「小中之湖」「大中之湖」の二度にわたる干拓事業にヨシ地を提供してきました。こ
の大中干拓築堤は、ヨシ地の中を通る予定でしたが、地主の祖父と数名の関係者などで話し合いをして、
ヨシ地を減らさないように考え、ヨシ地の沖合５０ｍの位置に築堤を作ることにし、その上で干拓事業に協
力しました。

また、大中之湖干拓工事の最中、大中之湖工事事務所より、続いて西の湖の干拓計画を立てて、ヨシ
地主皆に再度協力要請がありました。しかし、西の湖まで干陸されれば、最後の砦である「近江特産ヨ
シ」は壊滅的状態になるので絶対反対をしてヨシ地を守ってきました。こうして西の湖のヨシ地は私有地
であったおかげで残ったのです。

しかし、昭和４０年代、生活雑排水や農薬などが湖を汚して、ヨシが悪くなってくる中で、中国から安い
ヨシやスダレが輸入され、刈り取っても売れなくなりました。滋賀県が琵琶湖の水辺の環境で「ヨシ」を取
り上げて「ヨシ群落保全条例」を作ってヨシ群落を増やし、冬に刈り取り・火入れ・清掃などの維持管理を
するようにしました。

そこで平成4年から「ボランティアのヨシ刈り」活動を１５年間続けましたが、刈り取っても活用しなければ、
刈り取る意味がありません。それで、平成19年から「西の湖ヨシ灯り展」を立ち上げました。今年で10回目
になります。ヨシの利用・活用を目的に、ヨシを使うことでヨシの商品開発に繋げて、刈り取り・火入れ管
理し、ヨシ地の保全にもつながります。

「西の湖ヨシ灯り展」は子どもの頃からヨシを触り作品を作り、環境を考えたり、自然に親しむことを通し
て大人になったとき、いろんなアイディアの素材や活用の機会になると思います。先祖が残してくれた美
しい風景を次の世代に引き継いでもらうためにも、ヨシの利活用・光明を目的に新しい使い方を提案・ア
イデディアの活用をしていきたいと思っています。

ヨシは太陽が育ててくれた贈り物です。水・土・空気を浄化しています。我々の生活している中で大切
な環境3要素が、ヨシの活用で環境浄化に役立っているのです。

西の湖は琵琶湖のモデル湖で、ラムサール条約にも入れられた代表的な湖です。美しい琵琶湖を取り
戻すために、西の湖からはじめ、水もヨシも環境が良くなることで，琵琶湖の美しさを取り戻し，淀川水系
の下流府県にきれいな水を提供できることを望みます。

時代と共に水辺の風景は、大きく変化しました。これまで先人達が残してくれた風景は、、ヨシが冬の
北風に揺られながらも、凛と立っているような、変わらない風景を残していきたいと思っています。

西の湖ヨシ灯り展実行委員会 葭留 竹田 勝博